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執筆者の写真JCC編集部

[ 活動紹介 ]『SAGAの魅力を活かしながら日本一コスメビジネスがしやすいまちへ』佐賀県コスメ室

更新日:11月20日

佐賀県庁の中に、他の都道府県のどこにもない日本で唯一の部署があります。それが『佐賀県コスメティック構想推進室』略して『コスメ室』です。『日本一コスメビジネスがしやすいまち』というコンセプトを実現するために、様々な分野で活躍する6名にインタビューしました。


(写真左から:松本副室長・野田さん・北村室長(当時)・清河さん・髙原さん)

――どうして佐賀県にコスメ室を立ち上げたのですか?

北村室長:写真左から3番目)

 佐賀県は自然に恵まれており、コスメの自然由来原料としての農産物が非常に豊かな土地です。また災害が少なく、地理的優位性もあり、アジアのコスメティックビジネスの拠点としてまたとない環境にあると考えています。そこで、コスメビジネスに必要な産業を集積させ、コスメに関する自然由来原料の供給地となることを目指し、2013年に「コスメティック構想」が立ち上がりました。この構想の推進のため、県庁内にできた組織が、日本で唯一の「コスメ室」です。


――具体的にコスメ室ではどんな仕事をされているのですか?

野田さん:写真左から2番目)

 私は広報を担当しているので、ホームページ内で様々な情報発信を行なっています。中でも佐賀でコスメビジネスをされているトッププレイヤーの皆さんお一人おひとりにスポットを当ててインタビューした記事の掲載に力を入れています。この仕事を始めてから毎日のスキンケアに使うコスメのラインナップがどんどん増えてしまって(笑)作り手の想いや原材料や抽出方法へのこだわりなどを知ると、どうしても自分で使いたくなってしまうんです。そんなプレイヤーの皆さんが思う存分作りたいものを丁寧に作ることができるように、成分分析ができる佐賀県工業技術センターにお繋ぎしたり、ビジネスの専門家からのアドバイスがもらえる佐賀県産業イノベーションセンターをご紹介したりもします。

――個人ではなかなかハードルが高いような検査機関などに繋げてもらえるのは、プレーヤーの皆さんにとってもありがたいでしょうね。

野田さん)

 そう思っていただけたら嬉しいです。また、佐賀県には研究機関や大学との連携体制もあって、地産素材の持つ可能性や、まだ世の中には出てきていない効果・効能などを持つコスメ原料などを模索できる環境も整っていると感じています。佐賀県内のOEM企業(自社ブランドとして販売したい商品の開発・製造を委託できる専門の会社のこと)のなかには、小ロットでもサンプル作りに付き合ってくださったり、「できるところまでやりましょう」と一緒に走ってくださる企業さんもいらっしゃるので、東京では難しいとされていることでも、佐賀でならできる可能性がある、ということを、コスメビジネスを考えていらっしゃる皆さんに知っていただきたいです。

――そういう意味では、佐賀県は本当にコスメティック産業が集積しているだけでなく、商品開発の面でも強力なバックアップ体制が敷かれている、と言えそうですね。他にも「佐賀でコスメビジネスをやるべき理由」がありそうなので、ぜひ伺いたいです。


清河さん:写真右から2番目)

 私はコスメ室に配属されて4年目になり、県内企業の新たな事業創出を促すため、企業と大学との共同研究に関わることを担当しています。また、佐賀大学のリージョナルイノベーションセンター特任教授(2022年当時)である徳留嘉寛先生を中心としたプロジェクトも進めています。


コスメ研究というのは企業の内部に研究機関が置かれていることが多く、海外では国の一大事業としてコスメ事業を推進している国はあるものの、県が主体となった産学官連携での研究に関する取り組みというのは世界的に見ても非常に珍しいのではないでしょうか。あわせて人材育成にも力を入れていて、大学との連携を生かして、学生に対する講義を行ったり、企業との共同研究を通して研究者を育成していくことも目指しています。


徳留先生ご自身も、プロジェクトを進めていく上で、コスメ業界の未来を担う人材を佐賀から輩出していくために、一緒に研究する若手研究員の指導や、コスメティックビジネスに関心のある若い人たちに向けて、積極的にセミナーなどで登壇してくださっています。2022年の8月に行われた大学生・高校生に向けた化粧品セミナーでは、約150名の方々にご参加いただくなど、学生の化粧品に対する関心の高さを改めて実感しました。

――学生さんなどの若い世代の方に向けたコスメ産業についてのセミナーというのは面白い切り口ですね。毎日使うものだからこそ、若いうちから地産素材を使って丁寧に作られたコスメを愛用してくれたり、コスメビジネスに興味を持ってくれたりする方がこれからの佐賀のコスメビジネスを引っ張っていってくれそうですね!


野田さん)

 徳留先生にご協力いただいたようなセミナーの他にも、コスメティック構想を発信する様々なイベントを開催しています。取り組みや商品を体感していただけるイベント『SAGAn BEAUTY WEEKEND』では、地産素材を活用した体験型ワークショップ、佐賀市が取り組むバイオマス産業都市構想とのコラボ企画なども行なっています。

 また、佐賀県内でコスメ原料となる素材を「採る・植える・食べる・コスメをつくる」を体験できるツアーを開催したこともあります。自然豊かな離島の素材について学んだり、オーガニックコスメを扱う工場で働く地域の方との触れ合いなどを大切にしたイベントも行いました。

――コスメビジネスでの成功を目指すプレーヤーだけではなく、一般の方や将来を担う若い世代に向けての素敵な取り組みをたくさんされているんですね。佐賀県の地産素材やコスメ工場で作られたものを、一般のお客様に知っていただくために、コスメ室としてやっていることなどがあれば教えてください。

野田さん)

 地産素材を使用したコスメを女性誌のオーガニックコスメ特集に掲載していただいたり、キュレーションメディアで美容ライターの方にご紹介いただくことも増えてきています。ホームページに掲載しているコスメビジネスのプレーヤーさんたちへのインタビュー記事も、ビジネスをされる方だけでなく商品のユーザー層の方が読んでくださることに繋がれば、という想いもあります。

――私も読ませていただきましたが、本当に熱意とこだわりを持ってコスメビジネスを真剣に、でも楽しむことを忘れずにやっているプレーヤーさんお一人おひとりの姿が印象的に浮かんでくるような素敵な記事ばかりでした。佐賀県でコスメビジネスをスタートさせたい方へのサポートプログラムなどはあるのですか?

高原さん:写真一番右)

 私が担当している「ビューティー&ヘルスケア領域のアクセラレータープログラム」がまさにそのためのプログラムです。佐賀県の豊富な地産素材や多種多様なサプライチェーンといった強みを活かし、県内での起業、新規事業創出にチャレンジするスタートアップ支援に取り組んでいます。このアクセラレータープログラムでは、ビジネスやコスメの専門家と一緒になってビジネスプランを磨き上げていくサポートや、各企業や研究機関とのマッチング、資金調達などの支援を通じて、短期間で事業成長する機会を提供します。ただ、県庁職員である私たちにコスメや素材活用のノウハウなどがあるわけではないので、「こういうコスメを作りたい」と佐賀県でのコスメビジネスを考えてくださっている方に、その道のプロをお繋ぎする役割を担えたら、と考えながら仕事をしています。

――高原さんや野田さんは、民間企業で働いていた経験があると聞いています。

高原さん)

 はい。私は前職では重工業メーカーで働いていました。その時の経験を活かして、民間企業の目線で行政と連携するような仕事ができるようになれれば、と思います。

野田さん)

 私は航空会社から出向しています。私たちが目指す『日本一コスメビジネスがしやすいまち』を実現するために、ジャンルはまったく異なりますが、これまでの経験を活かしながら日々仕事をさせていただいています。 

――6名という少数精鋭で、皆さんがそれぞれにできる仕事をなさっているなんて、とても素敵なチームですね。松本さんはコスメ室の前はどこの部署にいらっしゃったのですか?

松本副室長:写真一番左)

 私はコスメ室の前は広報広聴課で広報の仕事をしていました。現在は室の事業全体に携わり、若い皆さんに自分の経験を伝えたり、何か困った時にサポートしたり、といった仕事をしています。2021年に野田さんたちが中心となって作ったホームページができました。そこには佐賀県でコスメビジネスをやっている事業者の皆さんの想いと佐賀県の良さが凝縮されているように感じます。私たちコスメ室にできることは、全力を傾けて皆さんを応援したい、と思っています。

――松永さんはどのような事業を担当されているのですか?

松永さん)

 私は元々化粧品に興味があったので、コスメに関わる仕事ができることは楽しく、充実感を覚えています。今は工場を見にいかせていただいたり、企業さまのお話を伺ったりすることが多くて、実物を見ながらいろんなことを勉強させていただく環境をありがたく感じています。これまでに佐賀で誕生した化粧品は、どちらかというと30代以上の大人の女性をターゲットにした、高品質・高価格の製品が多いそうです。今後は、現在10代~20代半ばのいわゆるZ世代にも県産コスメを使ってもらいたいというコスメ室の想いから、SNSなどの発信ツールも使いながら、色々な年齢層の皆さんに情報をお届けできるように、とお仕事をさせていただいています。

――松本さんのように経験豊かな人材から、松永さんのように社会人になられたばかりのフレッシュな人材が、コスメ室の中で一緒に働かれているのはとても素敵な職場ですね。私自身も実はコスメ室が携わられた化粧品を使わせていただいていて、本当に良いものが丁寧に作られていることを毎日実感しています。今日はコスメ室の皆さんに実際にお話を伺うことができて、佐賀がどんなにコスメビジネスに向いているまちなのか、を知ることができました。最後に、「佐賀でコスメビジネスに挑戦したい方」や、「自分が作っている農産物のコスメ原料としての可能性に賭けたい」と思われている皆さんにコスメ室からのメッセージをお願いします。

コスメ室)

佐賀県は立地的に海外、特にアジア圏に向けてビジネスがしやすい条件が整っています。また、災害にも強く、安定した生産体制で製品を提供できる環境があります。「佐賀に来ればコスメビジネスができる」と、佐賀県を選んでくださった皆さんに、行政機関の中にあるコスメ室だからこそ、血の通った温かいサポートができると考えています。少しでも興味を持ってくださった方は、イベント情報やアクセラレータープログラムの詳細なども随時更新されていきますので、私たちのホームページをご覧いただけたら嬉しいです。皆様の佐賀県での挑戦をコスメ室一同お待ちしております。



【あとがき】

 私自身が小さいながらも自然農で農園をやっていることもあり、佐賀の豊かな自然環境の中で作られている農産物のポテンシャルは非常に高いと実感しています。コスメ室の皆さんのお話を聞いている中で、佐賀の豊かな地産素材を活かすコスメビジネスのプレーヤーさん同士をお繋ぎすることに情熱を傾けてお仕事をされている姿がとても素敵でした。


「食べて美味しいものは肌にも美味しい」と、フランスのオーガニックコスメのお店で教えていただいたことがあります。佐賀県にはフランスのコスメティックバレーと協力提携を結んだJCC(ジャパン・コスメティックセンター)があり、有名コスメ企業とコラボして佐賀県発の原料開発プロジェクトがスタートしたりと、コスメビジネスを佐賀で行うメリットが、徐々に全国に広がっていると感じました。原料開発の段階から、製品として市場に届けるところまでを一貫して行える「コスメティック構想」を推進する中心的な役割を担う部署を県庁に持つ佐賀県のこれからのコスメビジネスでの躍進が楽しみです。

※2022年10月11日時点のインタビューです

※2024年4月1日付で佐賀県コスメティック構想推進室は「佐賀県コスメティック産業推進」に名称が変更になりました。



 

Text:野田 早百理


1982年福岡生まれ。23歳でドイツに移住し国際線CAとして乗務。29歳で帰国し、英語系YouTuberに。2021年4月から夫婦で唐津市七山地域おこし協力隊に就任し、デジタル手描きの『ななやま新聞』を毎月発行。3人の子どもたちと古民家での田舎生活と菜園ライフを満喫中。趣味は自然派スキンケアの手作り。




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