11年目のコスメ構想で始動した新たなプロジェクト、テーマは「オープンイノベーション」
――本日はお忙しいところ、お時間いただきありがとうございます。
佐賀県コスメティック産業推進室では今年度、新たな事業として『SAGAn BEAUTY オープンイノベーションプログラム2024』を展開されています。
佐賀県内企業と全国の企業が協業し、企業間の垣根を超えた連携によって新たな価値を創造する…いわゆるオープンイノベーションの手法を用いて、新たな事業を生み出すことを本事業では支援すると伺いました。
まずは佐賀県コスメティック産業推進室がオープンイノベーションに取り組む狙いを教えてください。
佐賀県 産業労働部 ものづくり産業課 コスメティック産業推進室
髙原 拓
髙原)
佐賀県コスメティック産業推進室はコスメ産業(以下健康食品等を含む)をサポートする専門部署で、全国の自治体でも大変珍しい組織です。
ある県内企業を訪問させて頂いた際、急激に変化する社会において、自社独自の新事業、或いは新商品開発だけでは市場ニーズに追いつかないので、積極的に異業種の企業と連携を増やしていきたいという意見を頂きました。
また新たな価値(事業のタネ)の創出に課題を感じているという意見も多く、これらの声に応えるために、オープンイノベーションを軸に事業を組み立てることを決めました。
これまでの企業誘致活動の成果もあり、おかげさまで佐賀県内には多くのコスメ関連企業に立地頂いており、コスメ産業集積に向けての下地が整ったと考えております。
これからはコスメと異業種とのコラボの推進を目指し、オープンイノベーションなどを通じ積極的に異業種と連携することで、例えば「コスメ×観光」や「コスメ×スポーツ」、「コスメ×福祉」といった、これまでになかった新しい価値を佐賀から創造していけたらと考えております。
――コスメティック構想が始動して11年、いよいよコスメ県SAGAが企業同士のシナジー効果を生み出す段階まで成長した実感を感じます。
今回本事業を受託されたのが、2024年7月に当会ジャパン・コスメティックセンター(JCC)に入会された株式会社アルファドライブ様です。
まずは御社が何をされている会社なのかというところから教えていただけますでしょうか?
株式会社アルファドライブ 地域共創事業部
梶原 あかり
梶原)
株式会社アルファドライブは、企業の新規事業開発を仕組みづくりから一気通貫で伴走支援しております。
過去に新規事業を立ち上げた経験や起業経験のあるメンバーが、支援する会社組織だけでなく、その社員ひとりひとりに向き合い、新規事業への挑戦を熱量を持って後押ししております。
これまでに大企業を中心に130社19,000件の企業内新規事業支援を行い、140件を超える事業化・会社化を支援してまいりました。
支援は首都圏の大企業にとどまらず、全国5か所に拠点を持ち、全国各地で地域企業や自治体による新規事業開発や人材育成、オープンイノベーション等の活動を支援するサービスを提供しております。
このような強みを持つアルファドライブと、グループ会社であり企業のオープンイノベーションを専門的に支援する株式会社ユニッジが一緒になり、佐賀県の美と健康に関する企業のオープンイノベーションを支援させていただくこととなりました。ユニッジでは、POLA、KOSE、花王などの美容・日用品領域でのオープンイノベーションをご支援した実績もございます。
今回の事業においては、佐賀県企業と全国の企業が、プログラム終了後も主体的かつ継続的に事業化に向けた協業を行っていけるよう、オープンイノベーションによる事業開発を一貫して支援させていただきます。
――オープンイノベーションを得意とする御社がサポートするのであれば、選定企業も心強いことかと思います。
JCCに入会されたきっかけは何でしょうか?
梶原)
JCC様の存在を最初に知ったのは、佐賀県さんからのご紹介でした。
佐賀県コスメティック産業推進室さんとJCC様のこれまでの関わりやご活動を伺うと同時に、JCCの役員の方々にもお会いさせていただき、佐賀県から新しいコスメティック産業を生み出すということに対しての皆様の熱意を感じました。
コスメ県SAGA独自のオープンイノベーションプログラムとは?
――SAGAn BEAUTY オープンイノベーションプログラムでは、実際どのように選定企業を支援しているのですか?
髙原)
今回の事業は「新規事業開発実践セミナー」と「オープンイノベーションプログラム」の2部構成で開催しました。
「新規事業開発セミナー」では、新規事業支援の経験豊富なアルファドライブ講師陣による講義を計4回開催し、座学と実践を通じて新規事業の体系的なノウハウを身に着ける術を提供しました。
セミナーは、プログラムに参加されない方も広く受け入れたことで、経営者や担当者など、当初の定員を上回る多くの方々にご参加いただき、新規事業分野への皆様の関心の高さに改めて驚かされました。セミナーを継続して開催して欲しいといった大変高い評価も頂きました。
「オープンイノベーションプログラム」では、他社との協業という手法を用いて、佐賀県内の参加企業(5社)の事業開発や生産性向上、販路拡大などの課題解決を約7カ月にわたり伴走支援します。
自社課題の設定から、協業先の探索、協業計画の策定から実際の協業に至るまで、実績豊富なアルファドライブの担当者が壁打ちの相手役となり、事業開発を強力にバックアップします。
――県内企業多くの方から反響があったことと思いますが、それほどまでにオープンイノベーションが求められている理由は何だとお考えでしょうか?
梶原)
現代のビジネス環境は「VUCA ※注1の時代」と呼ばれ、変化が激しく予想が困難で、複雑かつあいまいな状況に置かれ、全ての課題を自社のみで解決することが益々困難になっています。
そのような状況下では、所属や立場を越え、スピード感をもって複数社にまたがるイノベーションを生み出すことで、複雑な課題に対しての解決ができると考えています。
――おっしゃるように多様化・複雑化が進んだ現在のビジネス環境では、基礎研究から製品開発まで全てを自社で完結する自前主義(クローズドイノベーション)が限界に達しているといわれています。
そのような現在のビジネス環境においてオープンイノベーションに取り組むうえで、大切なことは何ですか?
梶原)
オープンイノベーションを行う上で大切にしているポイントは、オープンイノベーションはあくまで手段であり、目的は事業開発(顧客の課題解決)である、ということです。
「オープンイノベーション」が話題になる中で、それ自体が目的になり、誰がどう進めるのか仕組みが整わずお互いにストレスが溜まり、プロジェクトが頓挫する事例も見受けられます。
2社が「顧客の課題」を適切に捉えたうえで、その課題を解決する解決策をそれぞれの強みを活かしながら一緒に考えることが重要です。
協業は、事業規模や形態の異なる企業と活動していくことですが、お互いがフラットな関係性を築き主体的に事業化に取り組んで行くことで、継続的な事業化検討が可能になり、新しい価値が創造できると考えております。
弊社は、事業への意識や人材育成といったオープンイノベーションの基礎を大切にし、日々支援を行っております。
佐賀から全国へコラボレーションの輪を広げたい
――すでに協業企業が決定し、現在は仮説検証計画の策定など新規事業スタートに向けプロジェクトが進行していると伺いました。
オープンイノベーションプログラムの今後の展開について教えてください
髙原)
今年度末、「オープンイノベーションプログラム」では、佐賀県内の参加企業と協業先企業による成果報告会を佐賀市内で開催する予定です。各プロジェクトの事業アイデアや今後の展望について発表する予定であり、新規事業(協業)に挑戦したいと考えている事業者様やその支援に興味のある金融機関様、企業様などへ大変貴重な機会となっております。
また、成果報告会の後に交流会も予定しており、コスメ業界の方はもちろん、異業種の方にとっても情報交換の場として最適ですので、是非気軽に足を運んでください。
これらコスメティック構想の取組みを通じて、佐賀県内外で新しい価値の創造を志す仲間の輪が広がることを期待しています。
――最後に、コスメティック構想への思いや、今後どのように関わっていかれるかを教えてください
梶原)
今回『SAGAn BEAUTY オープンイノベーションプログラム2024』の事業の1つとして、日本最大級の経済メディア『NewsPicks』にて、佐賀県のコスメティック構想にかかる経緯や想いを取材した記事を9月に掲載いたしました。
その記事自体の注目度が高かったことに加え、「佐賀県がこのような興味深い取り組みをしていることを初めて知った」というコメントも多くいただきました。
佐賀県のコスメティック構想はこれからどんどん拡大していくと確信しておりますし、弊社は今回のご縁を大切に、全国に拠点を持つ新規事業開発の支援企業として、JCC会員様同士のコラボレーション、また新しい仲間とのオープンイノベーションを様々な形でサポート・盛り上げていければと考えております。
※注1:Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと。
佐賀県 コスメティック産業推進室
■所在地:佐賀県佐賀市城内1丁目1番59号
■TEL:0952-25-7397
株式会社アルファドライブ
会社概要
■社 名:株式会社アルファドライブ
■設 立:2018年2月23日
■代表者:代表取締役社長 兼 CEO 麻生要一
<お問い合わせ>
070-3769-5224 E-mail : saga.openinnovation@alphadrive.co.jp
Text:時津 道志
ジャパン・コスメティックセンター 情報発信担当コーディネーター
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