top of page
検索
  • 執筆者の写真JCC編集部

[ コラム ] 第2回:韓国化粧品市場の展望とトレンド

更新日:2023年10月31日

韓国の化粧品産業はその革新性とトレンドセッターとしての力強さで注目を集めています。

最近では、コロナ禍の荒波に立ち向かい、新たに活力を取り戻し、ポストコロナ時代の大きな変革期を迎えています。

このレポートでは、ポストコロナ時代からのトレンドに焦点を当て、肌の健康への高まる関心から持続可能性への懸念、先進技術の導入からパーソナライズされた美容ソリューションの台頭まで、大きな変革期にある韓国化粧品業界についてご紹介します。



① ポストコロナ時代の韓国の化粧品産業の3つの変化



1) 肌の健康に対する関心度の増加

コロナ禍以前は、多くの消費者が化粧品を選ぶ際に、色や香りなど外見的な要素に注目していました。しかしコロナ禍以後、マスクの着用が日常の一部となり、肌の健康を守る製品への関心が急増しました。

本来の肌の健康を重視する消費者が増加し、肌刺激を最小限に抑える基礎素材や、肌の免疫力とバリア機能を強化するための研究開発が本格化しています。結果としてメイクアップ化粧品の需要は急減しています。


2) 環境にやさしい持続可能性への関心の拡大

コロナ禍により、外出制限や外食の減少が見られ、デリバリーサービスが急増しました。これに伴い、使い捨て製品やプラスチックの使用量が増加し、環境汚染が注目されるようになりました。

特に化粧品業界では、製品の成分と、リサイクルが難しい容器などが環境への負荷として浮上し、環境にやさしい化粧品への需要が高まりました。クリーンビューティーに共感する企業の哲学と倫理を重視するグリーンコンシューマーも増加しています。


3) アンタクト※消費によるオンラインチャネルとデジタルマーケティングの拡大

新型コロナにより、アンタクト消費が一般的となりました。これに伴い、韓国の化粧品市場も急速に変化し、オンラインチャネルが中心となり、オンラインとオフラインが連携する形態が増加しました。

2022年における非店舗型チャネルのシェアは55.2%に達し、過去5年間で年平均10.7%の成長を記録し、初めて店舗基盤型チャネルを上回りました。

特にEコマースチャネルは、最近5年間で年平均26.4%成長し、流通チャネル全体の34.7%を占め、最も重要な販売チャネルとして確立されました。製品を単に体験して販売する従来のオフライン販売から、オンラインと連携して製品を提供する地域拠点販売へのシフトも顕著です。

※非対面・非接触を意味する韓国発祥の合成語



② オーダーメイド型化粧品時代の開幕



2020年3月、韓国政府が化粧品市場の新たな成長産業として育成中の「オーダーメイド型化粧品」時代が本格化しています。

オーダーメイド型化粧品とは、個人の肌のタイプや好みに合わせて売り場で即席で材料を混合したり、小分けした化粧品を意味します。個人の好みと個性を重視する消費者の要求が日増しに細かくなり、関連企業は最先端技術を活用した製品の細分化、専門化などでその要求に応えています。


特に、消費者個々の肌特性に合わせて売り場で化粧品を作ることができるようになることで、韓国国内化粧品企業はもちろん、ロレアル、ランコム、エスティローダーなどグローバル企業でも、オーダーメイド型化粧品の研究開発が活発に行われています。


韓国では昨年、オーダーメイド型化粧品制度が本格的に施行されました。

3Dプリンティング技術を活用してオーダーメイド型リップパックを作るサービス、専門機器で測定した皮膚の状態によって成分を即席で配合して作るオーダーメイド型セラムなど、皮膚測定から診断、製品製造までをワンストップで行うオーダーメイド型スキンケアソリューションが提供されています。

これは韓国コスメのグローバル市場進出において効果的な役割を果たすものと期待されています。


グローバル化粧品企業であるロレアルは、世界最大の家電製品およびデジタル技術の展示会であるCES(Consumer Electronics Show)2022で「オーダーメイド型リップメイク製造システム」、「即席トナーパッド※製造装置」などを披露しました。

この他にもロレアルは、環境革新企業と共同開発した持続可能なヘアケアシステム「ロレアル ウォーター セーバー」、ロレアル テクノロジー インキュベーターが開発したAI(人工知能)搭載の家庭用オーダーメイド型化粧品デバイス「Perso」(ペルソ)などの技術を披露しました。

※あらかじめ化粧水を染み込ませたコットン系の韓国発祥のスキンケア製品


エスティローダーの場合、「iMatch バーチャル シェード エキスパート」はカメラで肌トーンを分析しオーダーメイド型シェードを探すと同時に、肌より暗かったり明るかったり、またはクールトーンだったりウォームトーンなど好み別のシェードを失敗のない範囲内で選んでくれる技術を提供しています。


ランコムは革新的なビューティーテックを経験できる科学的な皮膚診断機器サービスを提供しており、自社店舗内で「スキンスクリーン(SKIN SCREEN)」、「ユースファインダー(YOUTH-FINDER)」といったAI、クラウドサービス、IoT(モノのインターネット)を融合した技術を通じて、消費者のオーダーメイド皮膚診断とニーズに合う製品を紹介しています。


MACは「Virtual Try-on」というAR(拡張現実)体験サービスを通じて、200種類以上のカラーおよびテクスチャの組み合わせをリップやアイメイクに適用できるシミュレーションが可能なサービスを提供しており、スマートフォンアプリを通じてメイクアップ化粧品をテストし、オンラインで簡単に購入することができるサービスを展開しています。


韓国のアモーレパシフィック社もオーダーメイド型化粧品とDX化を推進しており、AIを活用して顧客の肌のトーンに適した唇の色を提案し、その場で直ちにリップメイク製品を製造できる「リップ ファクトリー バイ カラー テイラー」で、CES2022のイノベーションアワードを受賞しました。


これらにより、オーダーメイド型化粧品は化粧品業界における革命的なトレンドとして、個別化と持続可能性の追求に応えています。



③ 価値消費トレンド(クリーンビューティーブーム)



コロナ禍以前から、有害物質問題などで安全な原料に対する消費者ニーズと共に、大気汚染や気候変動など健康に対する消費者の関心が急増するに伴い、クリーンビューティーは全世界的に注目を集めてきました。

特にコロナ禍以降、マスクの長期着用による肌トラブルが増加し、有害な化学成分が排除された基礎化粧品を求める消費者の需要が増加し、自然にクリーンビューティーに対する関心が高まっています。


欧米ではすでにクリーンビューティーに対する関心が高く、成分に対する重要性が着目され、パラベン・シリコン・硫酸塩などを排除した製品が脚光を浴びています。

最近は成分だけでなく包装材までその意識は拡大し、リサイクル可能な包装材と植物性インク使用製品が消費者の関心を得ています。


特に、製品の容器をプラスチックではなく環境にやさしい素材で開発したり、容器や包装材をリサイクルするブランドも増えています。一度使って捨てる容器と包装材に対する問題を認識し、これを減らすための努力をしています。

消費者のなかにも不必要な包装をなくし、リサイクル可能な包装材や容器を使用した、環境にやさしい製品を好む「グリーンコンシューマー」が増えています。


自身の信念と価値観により消費する「ミーニングアウト(Meaning Out)」が新しいトレンドとして定着し、ミレニアル世代とZ世代(MZ世代)を中心にエシカル消費、フェアトレードやジェンダー平等を目指す商品などに対する認識が広がり、クリーンビューティーに対する関心が日増しに高まっています。

業界でもこのような新しい消費トレンドを反映して、クルエルティフリーな「ヴィーガンコスメ」、自然由来成分を含む「クリーンビューティー」、リサイクル可能な包装材を使用した「エコパッケージ」などを通じてミーニングアウト消費トレンドに積極的に対応しています。


韓国の大手化粧品企業も、このような流れに合わせてエコ素材開発とリサイクルが難しい化粧品容器に対するアップサイクリングなど、多様な努力を進めています。



④ 化粧品産業の話題 (コスメシューティカルの進化)



コスメシューティカル(Cosmeceutical)は法的な用語ではありませんが、化粧品(Cosmetic)と医薬品(Pharmaceutical)の合成語で、医学的に検証された成分を含む機能性化粧品を指します。

これらは主に治療を目的として使用される化粧品で、皮膚再生、美白、ニキビ、アンチエイジング、皮膚疾患などに効果をもたらす機能性を強調した製品です。


コスメシューティカルは、その効能・効果に焦点を当てています。

新型コロナウイルスの長期的な影響により、コスメシューティカル市場は急速に成長し、2020年には554億ドル(約8兆円)と推定され、2025年までには700億ドル(約10兆円)に達すると予測されています。

環境汚染や気候変動などの要因によって引き起こされる炎症やアレルギーなどの肌トラブルの増加、また高齢化によるアンチエイジングに対する関心の増加により、有害成分のないマイルドで安全な化粧品を求める消費者が増加し、コスメシューティカルへの需要が高まっています。また、アンチポリューション、光ケア、マイクロバイオームなど新しい技術を組み合わせた製品が登場し、新たなニーズに対応しています。


また近年、製薬企業は新薬の開発には多額の費用と時間がかかることを考慮し、新しい収益源を見出すために自社の技術と原材料を活用して、化粧品などの新規事業を展開しています。そのため多くの製薬企業が化粧品事業に参入し、コスメシューティカル市場の競争が激化しています。


韓国は2026年までには65歳以上の高齢者が人口の20%を占め、超高齢社会に到達すると予想されており、高齢者人口の増加は皮膚ケアへのアンチエイジング需要と結びついています。そのため、コスメシューティカル市場は着実に成長すると見られています。



⑤ 人工知能と拡張現実を前面に押し出したビューティーテック



第4次産業革命が世界的に注目を浴び、化粧品業界でもAI、IoTなどの革新技術を活用し、新たな価値を創造しています。

スマートパッケージング、3Dテクノロジーを駆使したメイクアップ化粧品、フェイスマスクなど、先端技術を活かした製品が登場し、特にグローバル企業は個人用スキンケア製品や機器の開発など、幅広い取り組みを行っています。


全世界のビューティーテック市場は2018年時点で391億ドル(約6兆円)と推定され、2024年までに年平均18.4%の成長率で、約1072億ドル(約16兆円)に成長すると予想されています。

ビューティーテックはビューティー(Beauty)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉で、電子機器だけでなく、ビッグデータ、モバイル、クラウド、ナノ技術、AI、IoTなど、多岐にわたる技術領域を包括しています。


ビューティーデバイスの人気は上昇しており、今後もビューティー産業と先端技術の融合はさまざまな分野で進展すると予想されます。消費者はこのようなビューティーテックに触れ、その利便性をますます実感するでしょう。

今後もビューティーテックへの需要は高まることが期待されます。


例えば、アモーレパシフィック社はCES2020で、3Dプリンターと連携したスマートフォンを使用して顔の測定を行い、リアルタイムで図案をデザインし、5分以内に完成する「3Dプリンティングオーダーメイドフェイスマスク」を披露しました。

さらに、AI、スマートホーム、VR/AR(拡張/仮想現実)、IoTなど、幅広い技術分野でイノベーションアワードを受賞しました。


ビューティーテックでは、AIを活用した個人向けのオーダーメイド製品が化粧品だけでなく、消費者の需要の細分化およびパーソナライズにも応えています。

ビッグデータを基盤にした皮膚診断や個人向けのソリューションを提供し、最適な商品を提案する取り組みも行われています。



最後に


韓国の化粧品産業は、2023年においてポストコロナ時代の変化、オーダーメイド型化粧品の発展、クリーンビューティーブーム、コスメシューティカルの進化、そしてAIとVR/ARを活用したビューティーテックの台頭といった5つの要因により大きな転換期を迎えています。

これらの要素は、韓国の化粧品産業に新たな展望をもたらし、未来への期待が高まっています。

引き続き、このテーマに関する記事をお届けいたしますので、ご期待ください。


(※当サイトに掲載されている情報の正確性には万全を期しておりますが、技術上または法令解釈上など不正確な記載や誤植を含む場合があります。情報が不正確であったこと、あるいは誤植があったことなどにより生じたいかなる損害に関しても責任を負いません)



 

Text:ハム・ジュンス

ジャパン・コスメティックセンター 韓国コーディネーター



閲覧数:190回0件のコメント

最新記事

すべて表示
記事: Blog2_Post
記事: インスタグラム
bottom of page