今回のインタビュー企業、株式会社タカフジは関サバや温泉で有名な大分にあります。
――本日はお忙しいところありがとうございます。また昨年(2023年)ジャパン・コスメティックセンター(JCC)に入会いただいて以降、当会主催のセミナーでのご登壇などでご協力いただき、ありがとうございます。
現在では商品の開発をはじめとした様々な事業に取り組まれているところかと思いますが、まずは御社の概要についてご説明いただけますでしょうか。
弊社は平成元年(1989年)4月、各種プラントの建設、整備を主力事業として設立された隆藤工業有限会社が前身です。
平成11年(1999年)、業務拡大に伴い現社名に変更後は、プラント事業のみならず農業生産法人(現:農地所有適格法人)の設立、バイオマス発電所の建設、また再生可能エネルギーに取り組んだりと、様々な事業を展開しています。
――もともとプラント事業をメインとされていた御社が、農業に取り組まれるきっかけは何だったのでしょうか?
創業時からの中核事業だったプラント事業からの発展…といえばいいでしょうか。
プラントエンジニアリングにおいては、ボイラーをはじめとする熱交換器が重要な役割を担っています。プラント事業の拡大に伴い、弊社はそれに伴う技術や経験も蓄積してきました。
そして大分県は皆さんご存じの通り、温泉が豊富な「おんせん県」としても有名です。温泉の源泉数・湧出量ともに日本で一番なのがここ大分なんです。
そこで当社ではプラント事業において培った技術を応用し、地域資源である温泉(地熱)を有効活用するために、「温泉熱利用型農業用熱交換システム」を開発しました。
低温の循環水を地熱で温めることで、ビニールハウス内の温度調整を行うものです。燃料代もかかりませんし、SDGsの観点からも優れた技術だと自負しています。
現在はグループ内の農業生産法人「愛彩ファーム九重」に導入し、様々な農作物を生産しています。
特許も取得したので、今後幅広い展開も視野に入れているところです。
――さきほどおっしゃった農業生産法人が「愛彩ファーム九重」ですね。大分独自の地域資源である温泉を活用するとは、まさにエネルギーの地産地消ですし、環境負荷低減を重視する消費者にとっても魅力的だと思います。
愛彩ファーム九重ではどのような農作物を生産しているのですか?
まず最初はパプリカの生産から始めました。
地元の生産者を圧迫し競合することがないよう国内生産量の少ない品目であること、そして健康への可能性を秘めた作物を選んだ結果が、私たちにとってパプリカだったのです。
パプリカを栽培・販売し農業に携わったことにより、今後の日本は輸入に頼らず国内生産が必須と考えました。実はスーパーなどで売られているパプリカは約9割が韓国などから輸入されたもので、国産は1割程度にとどまっているのです。
――日本の食料自給率が低いのは知っていましたが、品目によってはそこまで低いのは少し意外でした。
現在はトマトやパプリカを筆頭に、白ネギ、レモングラス、ピーマン、シイタケ、もちきび等の生産を行っています。
近年は大分県庁の推薦により、バラ園、養鶏場の運営にも乗り出しました。
また農業を行うには肥料が必要となるため、堆肥設備も導入したところです。
――プラントエンジニアリングを専門とする御社が農業に取り組まれているのは、蓄積した技術の応用・発展のみならず、日本の食料自給率向上という目的もあるのですね。
今回の本題となりますが、御社が現在精力的に取り組まれている「森の細胞水」について教えてください。
わかりました。まずは弊社のプラント事業に関してから説明しますね。
弊社は2021年7月に営業運転を開始した、大分バイオマス発電所に共同出資しています。
バイオマス発電所に燃料となる木質チップを供給しているのですが、伐採の際に生じる木材の枝葉が大きな問題となっていました。
伐採を行った後に残る残置物を「林地残材」というのですが、枝葉はそのなかでも運搬コストが丸太に比べて高くなりがちです。収集に手間も時間もかかるうえ、体積の割に軽く嵩張るんですね。
林業従事者の方からも枝葉を買い取ってほしいという要望がありましたし、何より林地残材を放置すれば植林面積の減少や豪雨災害発生の要因など、重大な社会問題につながりかねません。
バイオマス発電をはじめとした再生可能エネルギーに携わる以上、弊社はこの枝葉問題の解消に取り組む社会的責任があります。
そのためには枝葉から有価物を取り出し、利益を生み出す仕組みを作る必要があると考え、研究を始めたのがそもそものきっかけです。
――この事業自体に御社のCSR活動としての側面もあるのですね。
そしてその解決策として編み出されたのが「森の細胞水」ということですが、こちらの森の細胞水にはどのような特徴があるのでしょうか。
まず、弊社独自の技術である「低温真空抽出法」という手法を用いて枝葉からエキスを抽出しています。従来の水蒸気蒸留では高温処理を行いますので、熱に弱い有効成分を取り出すのが困難でした。
低温真空抽出法では40℃以下という比較的低い温度で真空状態から抽出するため、有効成分を自然に近い状態で、かつその成分を水や溶剤で薄めることなく取り出すことが可能となっています。
この一連の抽出を行う「低温真空抽出装置」は初号機が稼働中ですが、現在2号機が試験運転中です。2号機では真空時における枝葉の微妙な温度管理が可能となっており、目的とする有効成分を抽出できると考えています。
――こちらにも御社のプラント事業の技術が生かされているんですね。
低温真空抽出法で抽出された「森の細胞水」には殺菌効果・消臭効果・芳香(スギ・ヒノキの香り)・リラックス効果・マイオカイン分泌促進効果等があると言われています。
特に「テルピネン-4-オール」そして「テルピネオール」は通常の水蒸気蒸留で抽出した精油と比較して、多く含まれています。
有効成分を壊さずに抽出した自然由来100%の原液は、除菌ミストやアロマはもちろんのこと、化粧品といった幅広い製品への活用が期待できるのでは、と考えられるのです。
また抽出した枝葉の残渣は、バイオマス発電の燃料はもとより土壌改良材や炭電池の材料にも使うことができます。
弊社ではこの枝葉の回収から抽出、残渣の活用までのサイクルを「タカフジ・プログラム」と名付けました。
――単に「森の細胞水」を抽出することを目的としたのではなく、枝葉問題を解消することによる地域活性化と森林再生、そしてカーボンニュートラルを同時に達成できるのがタカフジ・プログラムということなんですね。
最後に、今後の展開について教えてください。
現時点の森の細胞水は抽出コストが高いため、販売にはなかなか苦慮してしています。採算ベースに乗せるためにも、今後は付加価値の高い化粧品の原料としての利用を検討しているところです。
また現在、大手のホテルチェーンからも問い合わせを受けています。その会社はカーボンニュートラルを目標とした「タカフジ・プログラム」への関心が高く、自社の企業価値を高めるためにも、森の細胞水をアメニティグッズとして利用することを検討していただいています。
また、2024年9月30日~10月2日に開催された「ダイエット&ビューティーフェア2024」に、JCCさんの共同出展ブースで出展してきました。
――今回「森の細胞水」としては初めての出展だったと思いますが、会場での反応や手ごたえなどはいかがでしたか?
「ダイエット&ビューティーフェア2024」に参加したことは、多くの異業種の方々に私たちの事業に関心を持っていただく貴重な機会となりました。この経験は事業の幅を広げる大きな一歩となり、新たな可能性を実感する場となったと感じています。
今後もより多くの方々に弊社の魅力を伝え、販路を拡大していくためにしっかりと準備していきたいです。
森の細胞水の商品化・販路拡大も引き続き推進しますが、今後は低温真空抽出法を主軸とするタカフジ・プログラム自体を広める活動も展開していくつもりです。
大分、そして日本の豊かな森林を守るためにも、林業従事者の方々にしっかりと収益を還元し、持続可能な林業を実現できるよう、研鑽を重ねていきたいと思います。
インタビュー企業:株式会社タカフジ
「人、モノ創りから未来を拓く」
会社概要
■会社名:株式会社タカフジ
■代表者:代表取締役 佐藤隆彦
■所在地:大分県大分市三佐六丁目2番50号
■設立:1989年4月
■コーポレートサイト:http://www.takafuji-gr.co.jp/
■タカフジ・プログラム:https://tk-program.jp/
■事業内容:プラント設備工事、プラント設備メンテナンス、産業施設機器据付、
上下水道施設、ごみ焼却施設、リサイクル施設、塗装工事、エネルギー事業、
食品・アグリ事業
Text:時津 道志
ジャパン・コスメティックセンター 情報発信担当コーディネーター
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